後世への最大遺物 感想

この本は、内村鑑三先生の講演が書物になったものです。タイトルの通りで後世へ何を遺すかが書かれています。

この世の中をズット通り過ぎて安らかに天国に往き、私の予備学校を卒業して天国なる大学校にはいってしまったならば、それでたくさんかと己の心に問うてみると、そのときに私の心に清い欲が一つ起ってくる。
〜中略〜
しかるに今われわれは世界というこの学校を去りますときに、われわれは何もここに遺さずに往くのでございますか。その点からいうとやはり私には千載青史に列するを得んという望みが残っている。私は何かこの地球にMementoを置いて逝きたい。

Wikipediaに内村鑑三ページがあるほどの人でも、地球に自分の何かを残して逝きたいのだと考えていることで、ちょっと安心したというか意外というか、話の流れ的に「そんなことは思うんじゃない」とくるのかと思ったのですが、全く逆でした。
僕自身が最近は「足るを知る」ことも重要だよねと考えているため、どうも無欲であるべきという風に思ってしまいがちなのです。不動智神妙録の中でも「欲の力を以て無欲の義を為す」(無欲の義)という言葉もあるように、才能や力というのは使い方が大事ということですね。

後世へわれわれの遺すもののなかにまず第一番に大切のものがある。何であるかというと金です。

この一文を読んで、ショックを受けました。
世の中やっぱり金なのかと。
金を持たない僕は何も残せないのかと。

しかしながら何人も金を溜める力を持っておらぬ。

世の中全員に金持ちになる才があるわけではない、と仰っています。僕が「金を持たない人はどうすれば」と思うことなど、とっくの昔に予想されていたようです。

それで私が金よりもよい遺物は何であるかと考えて見ますと、事業です。事業とはすなわち金を使うことです。

金持ちになれないなら、事業を残せということです。ただ、現代を見ても、おそらく当時も同じだったと思いますが、金持ちと事業家を足した数よりも、それ以外の人のほうが圧倒的に多いです。では、そういう人たちは何を残すか。

私に金を溜めることができず、また社会は私の事業をすることを許さなければ、私はまだ一つ遺すものを持っています。何であるかというと、私の思想です。もしこの世の中において私が私の考えを実行することができなければ、私はこれを実行する精神を筆と墨とをもって紙の上に遺すことができる。

なるほど、確かに字なら誰でも書くことができると思わず納得しました。思想ということなら今でいう自己啓発書のことでしょうか。確かに力を得られることがあります。ブログだって自分の死後も何かの役に立つかもしれません。

思想を筆と墨で残したものが本であるならば、思想を他の手段で具現化したものが、工業製品であったりソフトウェアだと考えられます。

時間の前後で考えれば、何かを買うというのは、過去の物を買っています。
本や製品というのは未来を良くするための物である。またはそうあるべき物なのだと気付かされました。
製品を販売した時点で仕事が終わりなのではなく、使い始めてからの未来を良くすることができるか。

これはとてもよい発見でした。

本を書くこと、または教育によって思想を残せると内村先生は仰っています。しかし、話はこれで終わりではないのです。

事業家にもなれず、金を溜めることもできず、本を書くこともできず、ものを教えることもできない。
ソウすれば私は無用の人間として、平凡の人間として消えてしまわなければならぬか。

ここまでは、まだ特定の人しか残せない遺物でした。僕は思想を残すという時点で誰にでもできると思ってしまったのですが、浅はかだったようです。ならば、全ての人が残せる可能性があるものは何か。

最大遺物とはなんであるか。私が考えてみますに人間が後世の遺すことのできる、ソウしてこれは誰にも遺すことのできるところの遺物で、利益ばかりあって害のない遺物がある。それは何であるかならば勇ましい高尚な生涯であると思います。

具体的な人として、二宮金次郎を挙げています。二宮金次郎という人は名の知れた人ですが、事業ではなく、生涯の贈物を遺したと内村先生は仰っています。
現代で二宮金次郎といえば、作った何かが残っているというわけではなく、叔父に油がもったいないと指摘されると自分で菜種をまいて収穫した種を菜種油と交換したというような話が残っています。
誰にもこのような生き様が後世に残せるのだ、ということでしょうか。

なるほど、確かに心を打たれる物語がありますが、それらは思想ではなく、人間が実際にとった行動ですね。
マザー・テレサのような人はまさに高尚な生涯を後世に遺したのではないでしょうか。

普通の思考だと、有名人、もしくは所属している会社が有名な人のほうが名前を遺しやすいと考えます。それは間違いではないのですが、そこで思考を止めることなく、誰にでも後世に残せるものがあるんだよ、と説いていることが僕を含めた多くの普通の人たちに力を与えてくれるんだなと思いました。

本の要点を書いてしまいましたが、本文中には外国人の例も出されていますし、興味を持たれたなら、是非、内村先生の直接の言葉を読んでください。

Kindkeをお持ちの方は無料で読めます。

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